くまの書評ブログ【すべての書籍は血肉縁】

“血”となり“肉”となり、人々の“縁”となる読書の素晴らしさを、野獣目線で呟いていきます。

どんな脅威も起こってから想像するのでは遅すぎる【君のためなら千回でも】


   こんな時期だから紹介すべきなのかすべきでないのか……

 
   もはやISの脅威は欧米諸国だけでなくアジアや極東の国である日本にも上陸しつつある。

   だからそうなる前に考えてみて下さい。

   もし常にあなたの身近にそんなテロリストや過激派集団がいたら、ということを。

  本書(原題カイトランナー)は2003年に出版され、日本では2008年に映画化された。
  舞台はアフガニスタンと主人公の亡命先のアメリカ。重要人物は主人公と主人公の父の召使いであり、親友でもあるハッサンとその父。
  仲睦まじい二人は、お互いある事件を機に引き裂かれる。
 それも主人公がハッサンを見捨て、裏切ることによって。

  本書の後半(文庫版だと下巻にあたる)では、タリバンの犯したアフガニスタンでの悲劇や、残酷な現実、主人公に課せられた罪滅ぼしや試練が待ち受ける。
  そして多くのアフガニスタン人は、イスラム過激派集団の被害者であった。


 これ以上本書に即した解説や感想を述べていくと重要部分のネタバレになってしまうので書き控えるが、一つ分かったことがある。

 仏教よりはるかに多い信者を抱えるイスラム教やその国民は、驚く程世界で理解されていない、ということが。


 先月、テレビを見ていたら、フランスのテロを追悼している場所でフランス人の男が隣のイスラム教国の女性に
「あんたらイスラム教は女性の手足を枷で縛るらしいな」
 と毒づいていた。
 それに対し女性は
「それは違う!私達もテロで家族を失ってるのよ!」
 と絶叫していた。


 対岸の火事、という言葉ではすまされない程に、非イスラム圏の人間は、自分を含めて驚く程過激派組織のテロ組織やその狙い、そして現地の一般市民に無知、というより無関心だ。

 実際に先月のフランスのテロでイスラム圏のことを知ろうと思った人間は世界中にどれだけいるのだろうか?

 日本はテロが起きたらどうするか、などと考えている人はおそらくすごく少ない。
 実際に靖国で韓国人によるテロが起きても加害者と相手国を批判する声ばかりで(その方向性は決して間違っていないが)、被害が自らに及んだ時のことなどについてもびっくりするほど話題にのぼらない。

 現実世界とは、ショッカーがいるのに仮面ライダーはいない。そう考えてみると末恐ろしいことがわかるはず。

 

 もちろん、戦争やテロについて考えよう、などと、自分もそんな大それたことは言えた立場じゃない。

 しかし大切なものがある日ある出来事をきっかけにこぼれ落ちることの悲しさ、むなしさをこの本は教えてくれた。
 その出来事とは、テロや災害のような理不尽なものが原因かもしれない。
 克服できるはずだった自分の弱さが招いた結果かもしれない。


 罪滅ぼしをしても失ったものはかえってこないことに、人は失ってから気付く。

 自分たちにできることは、平穏とした生活の内に、それを想像するという小さなことだけ。

 しかし、それでいいと思う。

 良い思いから良い行いや運命が訪れるのだから。

 もう一度言うが、僕自身も世界の事や過激派組織について深く考察し正しい知識を拡散できる程偉い人間ではないので、あくまで身近の事を考えた上でコメントし、今回は幕を閉じよう。


 どうか今の日本が、想像力の豊富な人であふれて、平和が続くことを祈らんばかりである。