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くまの書評ブログ【すべての書籍は血肉縁】

“血”となり“肉”となり、人々の“縁”となる読書の素晴らしさを、野獣目線で呟いていきます。

利益で動いてきた人類と、世界史【世界史は99%経済でつくられる】

「我々が歴史から学ぶ唯一の事は、歴史から何も学んでいないということ」とはよく言われるフレーズ。
    経済学という面で見ても「栄枯盛衰」という言葉は常に当てはまる。

 

世界史は99%、経済でつくられる

世界史は99%、経済でつくられる

 

 



    本書は、歴史や現在の経済に対する考え方や捉え方を学ぶことを目的としており、古代→中世→近世→近代→現代と時代を遡りつつ、歴史と経済についての相関関係や背景、具体的な動きを記している。中学生の歴史を知っていれば学べる内容なので、多くの人にお勧めできる書作である。

    以下、各章のあらすじを箇条書きにしてみよう。

    ①古代
    なぜギリシアのような辺境の貧村が世界帝国となったのか。カエサルのような人物はその時どのようにして派遣を握ったのか。黄河文明から始まった中国の巨大市場の誕生と衰退はどのようなものであったか。金や銀といった当時の貨幣や軍事費用、インフラ整備と資金難に苦しむ経済の黎明が息吹き始める。

    ②中世
    ヨーロッパ北部沿岸部より、物流拠点が形成される。この発展により、物資の運搬の需要が急速に拡大し、交易のネットワークが形成され始める。ヨーロッパ各地に商業都市が形成され、新たな文明が躍動し始める。加えて、利子徴収の正当化や、金融業の拡大により、中世ヨーロッパは大きく発展していく。
一方、中国大陸でも「盛唐」時代の支配階級による経済格差、経済の発展を第一とする唐王朝から、宋王朝による世界初の紙幣(交子)、追いつかない鋳造、ハイパーインフレによって滅びた王朝と、現代の経済にも通ずる繁栄と衰退が訪れる。

    ③近世
    ルネサンス時代から始まる14世紀以降の時代。合併企業の台頭、金融市場で覇権を握ったオランダ、異民族により支配された中国。交易は世界へと広まり、この時代にかつての大国であったスペインや清王朝などは、どのようにしてその基礎を築いていき、勢力を拡大していったのか。利権の争いが激しくなる。

    ④近代
    産業革命によって、富やカネ以上に爆増した人口。化石燃料のエネルギーを獲得し、オートメーション化の著しい発展と新たなビジネスモデル。その裏では、人身売買や仕組まれたバブル、独立革命での争いや減らない貿易赤字など、数々の負の要素を生み出していった……

    ⑤現代
    石炭から石油へと代わるエネルギー、イギリスからアメリカ・ドイツへと移り変わる工業生産シェア、そして世界大戦及び世界恐慌
今もなお続く世界と経済の問題はここにきて急速に激化する。一方で、経済における戦争や貧富の格差、人民の動きや財政圧迫は、太古の時代からあった、轍を新たに踏みなおしているに過ぎないことに気づく。

    ーーまとめーー
    著者は本書で、1929年の世界恐慌リーマンショック後の世界経済を照らし合わせ、日本でも膨らむ債務圧力がやがて日本を滅ぼすことを指摘している。その上で、不確実性の増す現在の経済を注意深く見つめ、歴史を振り返ることの重要さを語る。
確かに、本書を読むことで歴史は繰り返され、富と貧困は常に隣り合わせであったことがうかがえる。
    特に、歴史に疎い私は
    ・カエサルが私兵を雇って征服のリターンの高さを富裕層に売り込み、投資を勧誘したこと。
     ・中世にモンゴル帝国で起こった銀本位制が確立された後に、シルクロードの商人たちの安全性が確保されたこと。
     ・産業革命時代に経済成長に必要な「資本の蓄積」「技術革新(イノベーション)」「人口増大」の3要件を全て揃えていたイギリスが世界を湧かせたこと。
    これらの史実をほぼ知らなかった。
    昨今のEU離脱やアメリカ大統領選挙でも言えることだが、本書を読むことによって、如何に人が自身の財布の中身と雇用と感情によって突き動かされてきたかを思い知らされる。人は、理性や信仰に動くのではなく利益で突っ走り、そのために数多くのものを犠牲にしてきた。当たり前のように思われるかもしれないが、こうしてその詳細を知ることが、今後の人生に役立つのは間違いない。


    しかし、そこで現在の安定性に胡座をかき極端な楽観論に走るのではなく、かと言ってパニックになるのでもなく、常に1日1日移り変わる経済のシステムや根幹を、全ての時代に生きる上で改めて学習する必要があるのではないか。