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くまの書評ブログ【すべての書籍は血肉縁】

“血”となり“肉”となり、人々の“縁”となる読書の素晴らしさを、野獣目線で呟いていきます。

ブラック企業に無批判に酷使されている人間は、生活保護受給者より迷惑をかけている!?

 

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)

 

 

 

 

ブラック企業」という言葉が世に出回ってからというもの、世間ではそのような違法性の高い企業がなくなるどころか一向に減る気配がない。

一体これはどういうことなのか。今回取り上げた今野晴貴氏の著書【ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪】を読んで、少しだけわかった。その実態以前にまず、どういった理由でブラック企業の経営者が肥え太るのかということを。

まず、この記事についてであるが、例によって本ブログでは紹介している書籍の中身のネタバレは慎む方針でいるため、中身がどのようであるか、というところまではここでは深くは書かない。
しかし、本作の内、私が大いに共感できる著者の文言があったため、一部だけ抜粋することにしよう。

「世の中を見渡すと、何故かブラック企業を批判する若者は『甘い』という論調が目立つ。『ブラック企業に入ったのは自己責任』『ブラック企業とか言わずに頑張っている人もいる』『ブラック企業なんていっているのは、甘い人だ』などである。(中略)私からすると『ブラック企業でも我慢しろ』という言説の方がよっぽど甘い

実際に、ブラック企業はあの手この手を使って、労働者を搾取し、悪徳弁護士や法律の穴、時の権力に守られた上で、数々の非人道的な行為を行ってきている。
その中で、労働者側が最もいち早く脱却せねばならない状態が「思考停止」だ。

はっきり言う。
今日日、労働基準法すらも守らない会社なんかで超低賃金・長時間労働で酷使されている人間なんか偉くもなんともないし、ましてや自分のことも大切にしていないので他人の事も考えていられていない。むしろ人(特に近親者)に心配をかけているのが関の山だし、後述するが、迷惑をかけている部分さえある。

ブラック企業と戦うための方法論や、ブラック企業から抜け出したいと考えている人やその家族達が具体的にどうすれば良いのか、などということは、敢えてここでは書かない。そんなものは本を買うなりネットで調べるなり弁護士や行政施設、カウンセラー等に相談するなり、いくらでも方法はあるからだ。繰り返すが、ブラック企業に勤めていることは自分のみならず人に迷惑や心配をかけている。幸い現在はまだ、非人道的な使用者やマスコミの流す腐った洗脳から逃れるための、自分を大切にするべく情報が溢れかえっている。しかしそれにも関わらず、そういったインフォメーションを利用せず、クズな経営者や権力者に栄養を与え、違法を生み出す温床をどんどん産み出しているから、ただ黙って言いなりになっている悪質な責任者の元で働く労働者は結果的に迷惑をかけている形になっていると言える。もっと言えば、犯罪の片棒を担いでいる。明らかな思考停止の集団が、世の中全体を駄目にする良い見本である。

もしブラック企業で勤める戦士の方々が、首尾良くその会社を辞めることが出来て、生活保護に頼らざるを得ない状況にまでなってしまったとしよう。それでも全然、ブラック企業に酷使されているよりもずっと人に迷惑をかけていないし、何より自分のためになる。また、日本のGDPと比較した社会保障の脆弱さや、その中で生活保護に充てられている税金の額がほんのわずかである事実、不正受給の数値もごく少数であることなど、そういった情報もここでは敢えて掲載しない。そのようなデータもまた、調べればすぐにわかることだからだ。

それでも、超低賃金・超長時間労働で勤めているブラック企業の戦士の皆様方は、こうおっしゃられるかも知れない。

「そんなこと言ったって、会社辞めて生活保護なんか貰ったらいろいろ制約があるし、金額も少ない」
「自己都合で辞めれば社会的信用が堕ちる」
「住んでいる所やローンや家庭の問題など、何らかの事情で貰えない人だっている」
「じゃあどうすればいいんだ」

しかし、私はそう言う方々に対して声を大にして言いたい。
「そろそろ思考停止に陥るのは辞めて、ご自分や家族の命を守るために、それらのご自分の人生の問題や選択を、ご自身で考えられるようになって下さい」
と。
そこでだ。
例えば仕事中でもボランティア活動中でも、今の私の言葉のような、「自分で考えて行動して下さい」という人間の言葉に「はい、わかりました」と即答をするのは“おかしい”のである。相手の意見にあっさり迎合していることは、少しも自分で考えて行動していない。このような小さな事でも「ん?」と疑問に感じなければ、思考停止状態というのは脱却が難しい。
第一、いくら何でも、明らかに自分の社会的信用、心身や寿命をゴリゴリ削られていて、挙句命まで搾取されかけているという自覚があるのであれば、そこから戦う、もしくは生きるために逃げる、という行動を取るのが人間、いや生物として当然だろう。ブラック企業を辞めるという選択肢は、ちっとも駄目な行為ではないのだ。
私から言わせれば、ブラック企業に勤めてちょこちょこ税金を納めている程度で、生活保護受給者はじめ働けない人に対しドヤ顔する人生の方がよっぽどタチが悪い。そしてマスコミやブラック上司の洗脳にまんまと引っかかり「生活保護を受給する奴らは人様の税金でメシを食わせてもらっている、だから生活保護受給者は全て弱者であり悪者」という呪縛のもと、思考停止しているのだから呆れるばかりである。

そもそも日本国憲法並びに、生活保護法に書かれてある条文は以下の通りだ。

日本国憲法第25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」
生活保護法第1条「この法律は、日本国憲法第二十五条 に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

最後の「自立を助長することを目的とする」というところが非常に重要で、例えば
【一時的に生活保護を受け、新たに転職や勉強をしつつ、スキルアップして自分を幸せに出来る人生を送るための就活やその他活動をすること】
は、それこそ法で定められている目的通りの事柄であって、全くもって恥ずべきことではない。また、それに加え、失業保険、傷病手当、住宅補助、その他様々な支援や福祉制度を用いて、必要とあらば自分を救うべきなのである。そしてーー月並みな表現になってしまうがーー「自分を幸せにすることが、ひいては周りの人即ち社会を幸せにすること」に繋がるのである。

最後になるが、本作はブラック企業に関わる人間だけでなく、その他全ての国民にとって重要な内容、アドバイスが豊富に書かれている(基本的な内容が多いが、意外にもそのような基本すらしっかり理解出来ている社会人は少ない)。決して「自分だけは」と思わず、本作のような書籍ーーもちろん書籍意外の媒体で調べたり、身近にいる詳しい方やプロに直接相談するのも良いーーで、情報を集め、自分や社会を、まずは少しでいいから、幸福にしていければ、と思う。