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くまの書評ブログ【すべての書籍は血肉縁】

“血”となり“肉”となり、人々の“縁”となる読書の素晴らしさを、野獣目線で呟いていきます。

10年前と何も変わっていない現在【新ゴーマニズム宣言 中流絶滅】

 

新・ゴーマニズム宣言〈15〉中流絶滅

新・ゴーマニズム宣言〈15〉中流絶滅

 

 

 本棚を整理していたら、何故かこの本が。

 【ゴー宣】シリーズは数年前に全部売ったはずだったのだが、何故この10年前のハードカバーの作品だけが残っているのか、ちょっと思い出せない。まあとは言え、たまには当時の日本を懐かしみながら読むのも悪くない。

 ………………と思ったのだが。

 何も懐かしいところなんてなかった。

 どういうことかと言うと、本書に書かれてあるありとあらゆる問題は、現在進行形で今もずっと続いているからである。これは小林よしのり氏に先見の明があったからというより(それも否定しないけれど)、今の日本の政治がどれほど杜撰なままここまで来てしまったか、という証明にもなる。いくらこの10年間にリーマンショック政権交代東日本大震災があったからといってこんなに停滞したままでいいんでしょうか。

 靖国問題北朝鮮核開発、中国の反日デモ、拝金主義の繁栄と衰退の繰り返し、そしてタイトル通りの格差問題。

 一時期民主党政権になった時はあまりにひどすぎたが、やっぱり自民党も大概だ。

 

 ただ日本なんか、実質的に終わりの始まり的な面が非常に感じられるものの、まだ目に見えて沈没しているわけではないのだから、これでも多国に比べればマシなのかもしれない。

 イラク戦争の勃発が13年前? つい最近始まって今も全然終結していないように見える。それどころか世界中でテロが発生して、欧米諸国は全く防衛もしきれないまま、世界中に火種を撒き続けている。北朝鮮も、相も変わらずミサイルを撃ちまくっている。日本以外の国ではテロが起きまくっている。ありがたいことではあるがどうしてこの国だけはこんな平和なのだろうか? 最近の外国人によるテロなんて、せいぜいこの前の韓国人による靖国神社の爆発くらいじゃないか――だからこそ今のうちからテロ問題に関して深刻に考えなくてはならない、ということは、過去の記事でお伝えした通り――。

 その靖国問題に関しても(作者の思想や主観も混じっているだろうが)当時の小泉政権の時代から、政府はどれほど日本という国が情けないか他国に見せつけてきただけだった、ということを思い知らされる――大体、私人としての参拝、って酷い屁理屈――。本当に、日本の保守層を欺くために形だけそうしていたに過ぎないのだろう。その証拠は、今になっても問題が全く沈静化していないことからもわかる。日本がアメリカにおんぶでだっこなのが、過去の話とはとても思えない。まあ個人的に、アメリカの内政干渉は許しても中韓は断固拒否っていう思想はある程度支持するけど。

 

 また、今からおよそ10年前といえば、ライブドア問題。時の権力は改革改革と叫びながら、ホリエモンをさんざん泳がせておいた。規制緩和といえば聞こえはいいが、要するにリミッターを外させ、市民から搾れるだけ搾り取る悪しきシステムに過ぎなかったということを再確認させられた。その結果、子供を含む一般層にも、マネーゲームや株や博打に躍起にさせ、貯蓄よりも投資を勧める。その構造を政府が間接的に作り上げる。……あれ? 今の中国と似たようなもんじゃん。もしホリエモンが逮捕されていなかったら、日本は今の中国と同じような道を歩んでいたのであろうか。そう考えると、ぞっとしない話である。

 確かに小泉元首相は言っていた。「格差は悪いことではない」と。今から考えてもただの暴論にしか聞こえないが、その言葉が通用する時代など、その時点で既に終わっていたのだった。新自由主義の時代がきて、下流の者でも努力すれば上流に這い上がれるという幻想を抱かせることにより、煙に巻きつつ国民から搾取してきた。そしてそれは今も何も変わっていない。この本で小林氏は「日本は時代がどう移り変わろうと誰もが同じスタートラインに立っているという幻想がある」と述べているが、言いえて妙だと思う。貧困家庭で育った子供は大人になっても十分な収入を得ることが出来ないケースが増え、結果的に少子化になり、負の連鎖が起こる。当時から考えなくてはいけない問題だったにも関わらず、この時点で政府は格差社会がひどくなることの危険性に全く触れずにいた。その時から疑問をもっていた人は多かったであろうが、早い話、全ては政府の思惑通り事が運んでしまっている。そしてその暴圧は今でも絶賛進行中である。

 

 賢者は歴史に学ぶ、とよく言われるけれど(実際ビスマルクはこんなこと言ってなかったみたいです)、ひょっとしたら今の日本が抱えている深刻な問題は、先人たちが積み重ねてきた負の遺産に過ぎないのではなかろうか。それを今を生きる人たちが学ぶことがどれほど大切かを、常に心得なければならないのだろう。決して風化させてはならない。現在の人々が抱える政治、経済面での苦しさは、偶発的に起きたものではない。現状に負けず劣らず狂っていた時代が、10年前には既にあったのだという事実を、理解せねばならないのだ。