くまの書評ブログ【すべての書籍は血肉縁】

“血”となり“肉”となり、人々の“縁”となる読書の素晴らしさを、野獣目線で呟いていきます。

村上春樹【風の歌を聴け】最高の一年にするために新年最初の記事は日本最高の知名度を誇る作家の最初の作品で

 みなさん、今年も残すところあと366日となりました(あぁ~~座布団全部持っていかないで~~)

 

 はい、ここからギムレットにサンドウィッチ、とめかしこんで、ジェイズ・バーからお送りいたします。

 

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 目が覚めたら、それは一つの始まりであり、終わりでもあった。巡りゆく季節が、まるで象が歩くようにゆっくりと近づいてきた。

 僕と妻は、昨日までの一年間でまた多くのもの失った。もちろん得たものもあったが、減ったものの方が圧倒的に多い。それは時間だったり、金だったり、あるいは他人からすれば取るに足らないものだったりする。その失ったものを、今年取り戻す旅に出るのか、それともアフリカの大地に眠る井戸のように見捨ててしまうのか、それはまだ決めていない。

 寝室の中で、妻は僕の隣で規則正しい呼吸をしながら眠りについていた。妻は僕の3倍くらい要領よく眠ることが出来る。寝つきも良ければ、滅多なことで目を覚まさず、寝起きも悪くない。おそらくべトコンが隣の家を襲撃しても、妻は自分の睡眠のリズムを崩さない。それはある意味で一種の才能なのだろう。おそらく彼女はどんなものを失おうと、その能力だけは手放すつもりは全くない、と推測できる。

 そのようにし我々はまた新たな一年を歩もうとしていた。

 

 妻に自分の眠りのスタイルというものがあるように、僕にも僕自身の食事のスタイルというものがある。朝食はバジルとオリーブオイルを和えたスパゲッティ―とカリフォルニアから取り寄せたコーヒー。それが僕の休日の始まりを過ごすための日課であり、ルールでもある。一度この食事メニューを止め、妻から差し出されたイギリスパンとミモレットに変えたことがあったが、その日は何だか休日なのに一日中僕の中でもやもやが晴れない気分だった。ちょうど冬を越す狼が貯蔵していた食料をなくし空腹を訴えるように、僕の気分は曇ったままだった。

「あなたは自分の生活を狭小に捕らえすぎているのよ」

 と、一度妻は僕にこう言ったことがある。僕としてはただ自分が過ごしやすい生活をしているだけに過ぎないのだが、その時は特に文句をいう事もなく黙っていた。

 僕の食事は材質にも決まりごとがある。最近は、生パスタを主食としている人が増えているようだが、僕としては多少古臭くても乾いた状態のスパゲッティーから茹でる方が好きだ。昔からの習慣を変えるのは僕の望むところではないし、第一自分の好みの固さで茹でられるというのは、生パスタでは味わえない利点だからだ。きっと近所のスーパーマーケットから乾麺のパスタが消え去っても、僕は電車に乗ってでも隣町の店まで足を運び、自分の好きなパスタを買うだろう。

 鍋に水を入れ、沸騰してからパスタを入れる。その時同時にコーヒーの用意をする。一度知人からもらったモス・グリーンの袋に入っているオークランド産のコーヒーを最初に自分で淹れ、飲んだ時、僕の胃袋は乾いた砂漠に冷えた水を浸したように潤った。世界中を巡れば、おそらくこれより美味しいコーヒーは200種類くらいあると思われるが、それでもこのコーヒーには何か特別な、何とも言えない味わいがあった。それこそバオバブの樹をかじる草食動物のように、僕はそれ以来そのコーヒーの虜となった。

 スパゲッティ―を茹で始めてからアルデンテに近くなった瞬間、突然、キッチンの棚に設置してある電話が鳴り響く。やれやれ、と僕はため息をついた。こんな日の朝に電話をかけてくるなんて、一体誰なのか見当もつかない。目の前のスパゲッティ―の湯を切るという作業が済んでも、電話の音はけたたましく鳴り続けた。麺が伸びてしまうのでこのまま無視しようとしたら、妻が寝室の扉を開けて、キッチンにいる僕に向かってこう言った。

「早く電話でろ。起きちゃったじゃねーか。何やってんだ」

 僕は言った。

「……………………村上春樹ごっこ」

 

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 というわけで、今日は村上春樹の処女作のこれで~すっ!!

 

 

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)

 

 

 内容?

 読んでみて下さい、面白いですから!

 以上!!

 

 あけましておめでとうございます。

 本年もよろしくお願いしま~~~~~すっ!!

 

 ・・・

 

 座布団がないリビングは冷えるなぁ。