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くまの書評ブログ【すべての書籍は血肉縁】

“血”となり“肉”となり、人々の“縁”となる読書の素晴らしさを、野獣目線で呟いていきます。

文筆家としての星野源【働く男】

 

働く男 (文春文庫)

働く男 (文春文庫)

 

 

 僕が初めて星野源を知ったのはちょうど今から一年前。

 なんとニコニコ動画で。

 

 アニメ・ガールズ&パンツァーの劇中に出てくる「あんこう踊り」という踊りに合わせて、星野源作「桜の森」がBGMとして流れるという奇妙な動画が投稿されていたことがあり、そこからたちまち彼の音楽に惹かれた(その動画は現在は削除されています)。

 

 あれからカレンダーを12回めくる間。

 星野源という人のことを知れば知るほど、各分野に非凡な才能を持つ人だということがわかり、今ではすっかりダウンロードした音楽を聴きまくり聴きまくるように。

 紅白にでるとのことだが、まあ歌うのは当然、あの曲だよね(っていうかもう曲目は発表されてるし(・・;)

 

 

 さて、この「働く男」という本は、まさしくワークスアルバムの如く、星野源のあらゆる仕事を寄せ集めた本で、表紙のふわ~りとした表情のように、ゆったりと読める。

 

 連載エッセイや自作曲解説などで、彼のあらゆる面が見えてくる。

(まさかそんなアニメオタクだったとは……僕みたいなニワカよりよっぽど多くを知っているじゃないか)

 もちろんアニメだけじゃない。いろんなコンテンツに造詣が深い所は、何となく読んでて微笑ましくも感じる。

 

 音楽にもあらわれているように、星野源の創作に何となく安心できる所があるのは、見栄を張らなければ生きにくいこの世の中で、好きなことをしながらマイペースに生き、何かにドハマりし、倒れるまで働くという彼の生き様にあると思っている。

 彼のように生きるのは決して簡単ではない。しかし本当は誰でも出来ることだから、共感することまでなら出来る。だからといって、それではつまらない、と諌めたりするのではなく、ただ純粋に安心感を与えることが出来るという彼のような生き方は、まさに今の時代が求めている元気の素と言っても過言ではない。

 

 僕みたいに毎日が貧乏暇なし人間にとっては、「〇〇オタク」と言える人をうらやましく思う事がよくある。

 何かに熱狂できるのは人生を楽しんでいる証だし、社会人の方の中では仕事や家事などもメリハリをつけて出来ている人が少なくないからである。

 そして彼の場合、それにプラスアルファして、人を楽しませ、安心させるというベクトルを持つため、普段自分はこんなことして楽しんでるよ、という文章一つ一つに説得力がある。

 

 それにしても、前半における映画のコラムは、ほとんど有名なものはなく、それでいて自分の体験談や考えをまじえているので、独特でユーモアあふれる切り口になっている。すごいなぁ……

 

 巻末の又吉直樹との対談も面白かった……が、又吉さんちょっとしゃべりすぎかも。これは星野源さんの本ですよ!

 

 思い出してみれば、ネットがなくてテレビか雑誌くらいでしか芸能人のことを知ることが出来なかった子供時代。決して安くないCDアルバムを買いジャケットを読んだ時、ミュージシャン自身によるライナーノーツが綴られていただけで、まるでそのミュージシャンのことを少しでも身近に感じられた気がして嬉しかった。

 そんな懐かしさみたいなものもこみ上げてくる。

 

 あまり触れるべきではないかもしれないが、「aiko bon」を読んだ時の感動とも系統が似ていると思った。こちらは文庫本なのでさすがにそこまでのボリュームはないが、手軽に楽しめるという点で得した気分になる。

 

 

 ダウナーでもアッパーでもない、ひたすら純粋に生きていく男の道標。決して読んで損はすまい。

 

 普段の生活に疲れていて本を読む暇もない、なんて方にこそ、是非手に取ってみてほしいと思います。